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更なる敵
前回の経験からの教訓を何も学ばなかった私は、イエローカードを突きつけられた自分の身体を無視し、無理な練習を続けた。
ある朝、起きて自分の左肘を見て驚愕する。私の肘は変形する程腫れ上がっていた。
青春、仲間、仕事、明るい未来、全てを置いて帰国してから1年後、また闇は私を襲った。練習中に左の肘に違和感を覚え、それが新たな悪夢のはじまりだった。
あまりの衝撃的な光景にも懲りず私はまた一人で解決しようと、肘を冷やしたり暖めたりと繰り返し、正しい治療方も行わず練習を続ける。そしてとうとう私の左肘は壊れた・・・。
左腕が上がらない。全く動かない。夜は刃物で切り刻まれる様な痛みが左肘を伝って体中を走り、一睡もできない。ここでやっと私は初めて病院を訪れた。
診察結果は「石灰沈着性腱炎」というものだった。関節の間にあるクッションが過度の摩擦により、すり減ってしまい炎症を起こし、やがて石灰化してしまったという内容だった。そのため、三角形になった石灰が関節の間に定着してしまい、動かす度に石灰の角が筋を傷つけ痛みが走る。
手術で取り除くにはリスクの高い場所にある為、リハビリを中心に治療する事を進められた。そこで、言われた言葉は「痛みは取れません。これからは痛みとどうやって戦っていくか考えてください。」
愕然とした・・・。肘を動かす度に痛みを伴う状況で、演奏なんかできる訳がなかった。
でも奇跡を信じて私は治療に専念した。その間バイオリンが弾けなかった期間は何と2年!
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